父の栗畑を受け継ぎ、他の仕事と農家を両立
鈴木 直樹さん
出身:岐阜県恵那市
就農年月:2018年
栽培している農作物:栗(利平、えな宝来など)、水稲
現在の圃場規模:栗 30アール、水稲 50アール
インタビュー
Interview
地域の農業に従事することで故郷に恩返しを
私は15歳まで実家に住んでいましたが、その後、進学のために実家を離れ、就職後も東京や名古屋、海外などで過ごしました。7年前に故郷へ戻ってきた時に、これからは30年以上離れていた故郷のために、何か地域へ恩返しがしたいと考え、その1つとして、父が栽培していた栗畑を引き継ぎ、親元就農をすることにしました。
帰郷する前から栗栽培に興味を持っていた私は、農協が行う剪定講習会に参加したり、インターネット上の動画を参考にしたりして、少しずつ就農に向けた準備を進めました。また、地域の東美濃栗振興協議会青壮年部が主催する「若手の会」に参加した際には、地元産の栗はニーズが高いにも関わらず、現状の供給は2割ほどにしか至っておらず、作ったら作っただけ売れる需要があると聞き、可能性を感じました。青壮年部は、経験年数が浅い生産者や50歳以下の若手で構成され「地域のために栗栽培を守りたい」という人が多く、私もその思いに共感し、就農後は青壮年部の会長を務めています。
工夫を凝らして農業と仕事をバランスよく継続
私は現在、企業向けの研修で講師などのコーチングの仕事と農業を両立。栗栽培は、夏の終わり~10月上旬の収穫期には、早朝に収穫を行い、洗って干した栗を午前9時に出荷した後、オンラインを中心に仕事をしています。栗は、風が運ぶ花粉によって受粉するため、他の果実のように1つ1つ手作業で受粉する手間がありません。また、収穫時も自然と落ちるのを待って拾うだけで、繁忙期も集中するため、他の作物に比べて他の仕事と両立しやすい作物だと感じています。
この地域は山間地で、私の圃場も機械の入りにくい山の斜面に設けられています。そこで私は、スペインやイタリアの農場で行われていた方法をヒントに、斜面のデメリットを逆手に取る工夫を考案。落ちてきた栗が斜面を転がり落ちてくることを利用して、栗が自然と集まってくるように斜面の途中に棚を設置し、作業の負担を減らしています。
栗の木の成長は非常に早く、収穫を終えた冬場は、不要な枝を取り除く剪定作業を行います。始めは枝の切り方が分からず、見様見真似で行っていましたが、本来は翌年に向けて芽が伸びやすいように考えながら剪定しなければなりません。今はこの剪定作業に奥深さを感じ、楽しみの1つになっています。
多くの人に地域の自然や農業を体感してほしい
この地域に役立ちたいと農業を始めた私の目標は、農業を通じた交流人口の創出です。たとえば、企業の研修プログラムに収穫体験や自然体験を取り入れたり、新たな分野のスキルや知識を身につける教育「リスキリング」として、剪定技術を教えたりすることを、研修を提案する企業として考えています。
また、栗栽培は兼業や副業にしても、私のように両立することができるので、週末だけ恵那市を訪れて農業をするスタイルの農家も増やしていけたらと思います。
地域の子どもたちに対しても、農業の魅力や地元の産業をもっと知ってもらうため、学校へ訪問して栗栽培を教える授業を行っています。農業を通じて地域の課題を再認識したり、解決方法を考えたりする機会を創出し、「農業も将来のいい選択肢になる」ということを伝えていきたいです。
他の仕事と農業をしっかり両立!
私は他の仕事と農業を両立し、仕事と農業を7:3くらいの比率で行っています。栗栽培は早朝と夕方に集中的に行うので、昼間は仕事に専念できます。農業で自然から学ぶことが、仕事にも活かされていると思います。