経営の知識を身につけて、一度は諦めた農業に再挑戦

多治見市 乾燥豆 独立自営就農

寺西 正憲さん

 私は高校を卒業後、農業の専門学校に進学して有機栽培を学び、きのこを栽培する農家に就職しました。しかしその時には、農業で生計を立てていくのは難しいのではないかと思い、大学に入学し直して外資系企業に就職。そこで経営戦略やマーケティングを学び、「こうすれば農業もうまく経営していけるのでは?」と感じるようになりました。ちょうどその頃、長時間の通勤に苦痛を感じ、体を壊してしまったこともあり、もう1度農業にチャレンジしようと、2018年、当時住んでいた埼玉で土地を借りて、露地野菜をつくり始めました。

 地域のマルシェに出店するなど、自分でつくった野菜を売る販路を開拓し、認知度も高まってきた頃、妻の祖母が多治見市に農地や山を所有し、管理してくれる人を探しているという話を聞き、新たに農業を志していた人に埼玉の農場と販路を譲って、移住を決意。長女が小学校に上がるタイミングに合わせて、2021年12月に多治見市に移住し、祖母の土地に加えて高齢で農業ができなくなった人の土地を買い取って、就農しました。

 移住後、主力として栽培する作物には、乾燥豆を選択。埼玉にいた時から競合が少ないと感じ、自家採種ができる固定種専門の種苗業者から種を購入するなど、個人的に在来種の豆の種を集めていたため、これを機に始めてみようと考えました。現在は、約40種類の豆を栽培し、食品としてはもちろん、種としても販売しています。

インタビュー

Interview

地域活性化につながる試みにもチャレンジ

 私は、埼玉県で独立した時から付加価値の高い作物を目指し、無肥料・無農薬栽培へのチャレンジしていました。無肥料・無農薬栽培は、成長スピードが遅くなったり雑草対策が大変だったりと、デメリットもありますが、できた作物はアクが少なくスッキリとした味わいでおいしいと好評を得ており、リピーターも増えています。豆は収穫後も、さやをもいで殻から脱粒する作業に手間がかかるため、それを補うためにエンジン式のビーンスレッシャという機械を導入。2023年にはぎふ清流GAP認定農場も取得し、持続可能な農業を目指しています。

 販路については、移動30分圏内に商圏を絞って、認知度アップに注力。ファミリー層の多いエリアで定期的に出店し、リピーター獲得を目指しながら、徐々にエリアを広げていく戦略をとっています。他には類のない品揃えで、「豆専門店」というイメージを定着させています。

 また、2022年には第5回たじみビジネスプランコンテストに参加。子どもたちを対象に、1年を通じて豆の種まきから収穫までを行った後、採れた豆で味噌をつくる農業体験を実施することと、多治見駅北口に隣接する虎渓用水広場で、有機栽培の野菜を中心としたオーガニック専門のマルシェ「多治見オーガニックファーマーズマーケット」を開催することを提案し、創業部門グランプリを受賞しました。マルシェは6月から毎月開催しており、SNSでの情報発信や駅周辺を中心としたチラシのポスティングなどで、徐々に来客数が増え始めています。このマルシェに来たお客さまが、その足で多治見市の地場産業である陶器を見に行くなど、地域を活性化する動きにも発展していけばと考えています。

ネット活用や体験農園など多角的な経営に挑む

 今後は、さらに豆栽培に特化し、農地をさらに広げて、豆の展示圃場をつくるなど、豆のプロフェッショナルを目指したいと思っています。豆の中には、栽培する人がおらず絶滅していく品種もあります。古くから日本に根づいてきた豆は、名前にも1つ1つアイデンティティがあり、食の地域性を司る大切な要素にもなっているため、そうした食材が消えてしまうことは、地域性を失くすことにもなると感じています。そうした品種を守るためにも、種用の畑をつくり、種を次世代へつないでいくことも考えています。

 また、まずは子ども向けにスタートした農業体験も、「農業をやってみたい」と思っている大人にも門戸を広げていきたいと思っています。この地域は農家が少なくなっているため、本気で取り組みたい人を雇い入れて独立をサポートし、地域で協力し合える農家のネットワークを構築していくことも、目標の1つです。その一環として、有機栽培での大規模農業にチャレンジし、ランボルギーニやジョンディアのトラクターに乗りたいという夢も持っています。(笑) 身をもって「やり方次第で農業は儲かって楽しいビジネス」であることを示すことで、農業を魅力的にし、後進を育てていきたいです。

OFF TIME

雨の日をオフにして趣味を楽しむ時間に

 今はマルシェの開催などがあり、休みがなかなか取れていませんが、雨で作業ができない時などは、趣味の海釣りや水泳などを楽しんでいます。家族と水族館や博物館めぐりも好きなので、アクア・トトぎふや岐阜かかみがはら航空宇宙博物館など、岐阜の施設も満喫しています。