地域の農業を担うため、就農・法人化・新品種にチャレンジ

羽島市 親元就農

渡邉 裕介さん

出身:羽島市
就農年月:2019年9月
栽培している農作物:米(ハツシモ、ほしじるし、あきだわら、清流のめぐみ)
現在の圃場規模:6500アール

インタビュー

Interview

農家を継ぎ、安定経営に向けて株式会社を設立

 私の実家は、父・母・兄が水稲や野菜を栽培する農家でした。私自身は、引っ越し業者に10年ほど勤務していましたが、両親が高齢になったこともあり、「私も生まれ育った地域で農業を盛り上げていきたい」という気持ちが高まり、農家へ転職することを決めました。

 就農後は、両親が野菜、私が水稲を担当し、農協や農林事務所の方々から指導を受けながら、栽培方法などを独学で研究。また、収支や働き方などを見える化して、安定的な経営を目指すため、2022年に株式会社を設立しました。

 現在は、兄と若手社員3人で作業を行っていますが、相談しながら作業工程を組み、繁忙期以外はできるだけ土日を休暇にして、年間110~120日の休日を確保できるようにするなど、職場環境を整えることにも注力しています。その結果、メリハリのある仕事ができてモチベーションが向上し、法人化して1年目から売上を倍増することができました。

機械化・効率化を図り、若い人材を育てていきたい

 米栽培は、その年々の天候で病害虫対策や水管理などがまったく異なるため、天気と付き合うことがとても重要。さまざまな農家さんに話を聞いたり、気象庁のデータを見て予想をしたりしながら、試行錯誤の毎日です。特に、病害虫対策には力を入れ、圃場の草刈りには細心の注意を払っています。自分で計画を立てることは大変ではありますが、自分のペースで働くことができるのも、農家の魅力でもあると感じています。

 最初は、栽培する品種も「ハツシモ」がメインでしたが、徐々に品種を増やして、収穫時期を分散させています。それでも収穫時期は偏ってしまうので、今後は裏作にもチャレンジしていきたいと考えています。また、体の負担を軽減し、少ない人数でも多くの面積を管理できるように、機械の大型化や新しい機器の導入にも積極的に取り組んでいます。昨年からは病害虫の防除を効率化するため、ドローンを導入。新型のコンバインも購入して、収量計や収量マップなどで統計データを取るなど、見える化を進めて次の計画に活かしています。

 私は農業を始めた当初から、「この地域の農業を担っていきたい」と思いを抱いてきました。現在、私よりも年下の若手農家は少ないため、今後は人を育成してエリアごとに子会社化し、若手に任せて活躍の場をつくることも目標の1つです。就農をめざす若い世代に農業の魅力を知ってもらうために、近年は岐阜県農業大学校から研修生を受け入れたり、地元の農林高校で行われる出前授業に講師として参加したりしています。

ハツシモ岐阜SL以来となる地場産の新品種誕生に協力

 3年前から、岐阜県が「ハツシモ岐阜SL」以来、10年振りに主食用米として開発したオリジナル品種「清流のめぐみ」の研究会メンバーに参加しています。この研究会は、米の生産者、米卸業者、全農岐阜、岐阜県農業会議、岐阜県で構成されたもので、私は岐阜県稲作経営者会議の青年部に所属する、45歳以下の若手有志の1人として、生産者の立場で参加。生産者16人で各自の水田を提供し、試験栽培に協力してきました。

 「清流のめぐみ」は、「コシヒカリ」並みの品質と食味を備えながら、高温障害に強く倒伏しにくいという作りやすい品種です。試験栽培では、16人で約42トンが収穫され、岐阜から発信する新たなブランドとして、生産者も今後に期待しています。試験栽培後は、研究会のメンバーから品種名が公募され、投票や協議の結果、私が提案した「清流のめぐみ」という名前が選出されました。さらに米袋のデザインは、農業高校生から公募し、かわいいデザインの米袋も完成しました。現在、清流のめぐみは県内のスーパーで販売されており、新たな地場産米の誕生に携わることができたことに、誇りを感じています。

OFF TIME

冬場にしっかりと休日をとってメリハリを

 冬の間は、雪が降ると作業ができなくなるため、年末年始を中心に2~3週間の休みをとって、旅行などに出かけています。今は繁忙期になると休めなくなりますが、近年は土日休みの農家も増えているので、作業効率を高めて働き方を整備していきたいです。