農業法人の担い手として、雇用就農を魅力ある職業に
木村 颯さん
出身:大垣市
就農年月:2020年4月
栽培している農作物:米(ハツシモ、ほしじるし、しきゆたか、飼料用米)
現在の圃場規模:280ヘクタール
インタビュー
Interview
他分野での経験をいかして、父が営む農業法人の継承を
私の父は、27歳の時に遊休農地対策事業に取り組む農業法人・西濃パイロットを設立。次世代の子どもたちに安全・安心な米を食べてもらいたいと、30アールの圃場からスタートし、現在の規模まで拡大しました。私も学生時代から、長期休暇にアルバイトをして仕事を手伝い、後を継ぎたいと思うようになりました。
父は「まずはやりたいことをやってみて、それでも継ぎたいと思ったら継承すればいい」という考えだったため、私も農業を選択肢に入れつつも、大学卒業後は人生の役に立つはずと感じ、証券会社に入社。4年間の経験を通して会計や経営の知識を得て、父の農業法人に入職しました。
今は、実際の農作業を覚えるため、日々、現場での作業に従事しています。まだ基礎が身についたくらいですが、地域の農協や普及員から指導してもらい、基本に忠実に作業することを大切にしています。
効率のよい作業体系の確立で、雇用就農を仕事の選択肢の1つに
現在は、農作業を行いながら、部長職として栽培計画を立てる役割を担っています。稲作は、大型機械を用いた労働が主となるため、体の負担は少ない一方、機械の性能によって生産性の上限が決まってしまうという側面があります。そのため、効率と品質のバランスをとりながら、計画どおりに作業を進めることがポイントになります。効率的に作業ができ、予定よりも早いスケジュールで作業ができた時や、コストが抑えられた時は、達成感があります。
また、稲作は多くの人が携わるチーム戦なので、人の配置やモチベーションの保ち方も重要になります。現在、12名の正社員のうち、自分を含む6名は若手です。繁忙期の大変さや不定期の休日など、まだまだ課題はありますが、働いていて「楽しい」と思ってもらえるように、一般的な企業以上にしていければと考えています。
新規就農で稲作をするには、農地や大型機械などの設備が必要で、他の作物よりも高いハードルがあるように思います。その点、うちのような農業法人における雇用就農は、自分の頑張り次第でキャリアアップや所得アップが目指せる環境でもあります。就農を考える人におすすめするのはもちろんのこと、多くの人にとっても、他分野の企業を選ぶように雇用就農が将来の選択肢の1つになればうれしいです。
地域の稲作を守るためにも、規模拡大を目指す
父の夢は、日本でもトップクラスの規模である、1000ヘクタールまで圃場を拡大すること。大きくなれば悩みも増えると思いますが、その分、やりがいも大きくなるはず。ただ圃場を拡大するだけなく、新たな組織をつくってある程度の広さの圃場を分割し、グループ化するなど、さまざまな方法を模索しながら私も父の夢を追っていきたいと考えています。最近は、農家同士がSNSなどを通じてつながることができ、作業にアドバイスやコメントをもらったり、ネット上にアップされる手法を参考にしたりと、若手農家や先輩経営者の情報からアイディアのヒントを探っています。
近年、この地域では個人の農家さんが高齢になり、後継者がおらず辞めていく人が増えています。近隣の農家が集まり、農業生産を共同で行う集落営農も、同様に高齢化が進み、「大型機械による作業を任せたい」という声も多くなってきました。稲作が中心である西濃地域を守るためにも規模を拡大し、従業員の働く環境や条件を整えて、魅力ある職業にしていきたいです。
雨でも子どもと楽しめるレジャースポットへ
日々の作業は8時~17時勤務と隔週での土日休みが基本ですが、休日はどうしても天候に左右され、雨の日が多くなってしまいます。私は今、1歳半の子どもがいるため、休日は一緒に出かけられるよう、日頃から雨でも遊べる場所を探しています。