いちごの新規就農者研修所で手厚い支援を実感
大矢 的充さん
私は就農する以前、製菓原料のメーカーでお客さまのニーズに応える製品をつくる開発業務に従事していました。その中で、食品の原点である原材料をつくることに興味を持ちました。これまでは、基本的に依頼を受けたものをつくり上げるため、そこに自分のこだわりを込めることは限られましたが、栽培から販売までを一貫して手がけられる農業なら、こだわりを貫けるのではないかと考えるようになりました。
そこで私は、新規就農を目指す人を対象としたセミナーに参加。そこで出会ったJAめぐみのの担当者と話をする中で、岐阜県にはいちご農家を志す人が、生産技術や農業経営を学ぶことができる研修所があることを教えてもらいました。話をするうち、いちごは単価が高く、安定した需要を見込めると感じた私は、農業を1つの選択肢として具体的に考えるようになり、JA全農岐阜いちご新規就農者研修所の受講を申し込むことにしました。
研修所では、1年2ヶ月をかけていちごの栽培や出荷の方法などを学びます。就農する際にも、農地を貸してくれる人を紹介してもらったり、補助金の申請をサポートしてくれたりと、支援の手厚さを感じました。また、同じ研修所で学んだ仲間や先輩には、困り事の相談などもすることができ、何も分からないところから始めた私にとっては、研修所に通ってよかったと感じています。こうしたサポートのおかげで、2022年5月に研修所を卒業した後、8月にはハウスが完成。いちご農家としてのスタートを切ることができました。
インタビュー
Interview
夫婦で自由に働けるスタイルが農業の魅力
栽培する品種は、研修所でも育てていた美濃娘を選びました。しかし、栽培を始めてみると、研修所とは土の乾燥具合が異なり、1年目から害虫が発生。研修所の先生などに相談して対処をしたものの、思ったように効果が出ず、難しさを実感しました。その経験を糧に、早めに虫が発生した苗を取り除いたり農薬を用いたりと、試行錯誤を繰り返し、少しずつ改善に向かっています。今は、病害虫を出さないことが一番の目標なので、被害がなく元気に育っている苗の姿を見るのが、何よりの喜びです。
農業を始めて、あらためて自分に合っていると感じているのは、自分のペースで仕事ができるところ。会社勤めのように時間に拘束されることもなく、夏場は比較的涼しい早朝や夕方に作業をシフトしたり、休みを取りたい日に合わせてペース配分したりと、自由に働き方を選択できることに、働きやすさを感じています。
また、夫婦でできる点も、私たちにとっては農業の魅力の1つです。現在は、私が農薬や肥料、温度コントロールなど、日々の管理を担当し、妻が働きに来てくれるアルバイトさんの管理などを担当。その他の業務は2人で行い、収穫シーズンは両親に手伝いを頼んでいます。いちごは見栄えが非常に重要なので、パック詰めは大事な作業。何回も触ると傷みやすくなるので、慣れるまでは何度も練習を重ねました。私たちが出荷するいちごは、地元のスーパーマーケットでも売られているため、店頭に並んでいるのを目にすると、うれしさや達成感を実感できます。
価値の高い初期の収量アップへ、工夫を凝らす
いちごは、早い時期に収穫できた方が高値で売ることができるため、今後は年内の収量を上げることにも注力していきたいと考えています。近年は、夏の暑さがいつまでも続き、苗の段階で高温にさらされると、開花や収穫の時期に遅れが生じてしまいます。そのため、定植後の温度をできる限り下げる工夫をしたり、栄養状態をコントロールしたりしながら、早めに花芽分化するようにしていきたいです。
また、私たちが感じている農業の魅力の1つに、定年がなくずっと働き続けられることがあります。そのためにも、まずはローンを早く返済し、ゆとりをもって夫婦で長く続けていくことが目標です。
平日休みや半休を自由に取れるのが利点
作業の少ない時期は、平日を休日にしたり、早めに作業を終えて半日休みを取ったりできるのも、メリットだと感じています。休みの日は、外出をしたりゲームをしたりして、リフレッシュしています。早朝の作業に備えて早寝早起きも定着し、体も健康になりました!