前職の経験を糧に、効率的で可能性あふれる農業を

岐阜市 いちご 独立自営就農

太田 朗さん

出身:岐阜県多治見市
就農年月:2019年6月
栽培している農作物:いちご(美濃娘)
現在の圃場規模:19アール

インタビュー

Interview

製造業の経験や考え方をいかして農業で起業

 私は機械製造の会社で働いていた頃から、将来は起業したいと考えていました。そんな時、目に留まったのが、JA全農岐阜いちご新規就農者研修所における研修生募集の告知。農業は初心者でしたが、近年、ICTなどを活用したスマート農業などが進むこの分野で、前職で培った効率的なものづくりや問題解決の手法がいかせるのではと可能性を感じ、新規就農を目指す人を対象としたイベントに参加しました。

他の作物にも興味はありましたが、「やるなら、好む人が多いいちごにしよう」と妻と相談し、JA全農岐阜いちご新規就農者研修所で1年2カ月の研修を受講。そこで初めて体験した農作業は、どれだけ時間があっても足りない、想像以上に大変なものでした。そこで私は、あえて作業の手を抜き、栽培に支障が起こらないギリギリのラインを把握して、対策を考えるリスクマネジメントを試験的に実践。研修という時間を最大限に活用し、失敗しないための対処法を体感した上で、就農をすることができました。

常に業務改善を図り、無理のない農業を実践

就農後は、毎日の作業効率を上げることを第一に考え、短時間で確実にできる栽培方法を模索。やはり自分自身に疲れが溜まると、効率も悪くなるため、楽に作業ができることも大きなポイントでした。歩く距離を極力短くするため整然とした圃場環境をつくり、作業内容や流れを分析してハウス内も動きやすいレイアウトにするなど、省力化に努めています。多忙になる収穫シーズンも余裕をもって作業ができるよう、出荷作業で大きなウエイトを占めるパック詰め作業を「JAぎふいちごパッキングセンター」に委託し、負担軽減を図っています。

いちごは、古い葉を取り除いたり花を間引いたりする管理作業が遅れると、病害虫の原因になったり、実が小さくなったりと、さまざまな弊害が出てくるため、毎日行う作業は膨大です。自分に余裕や時間がなくなると、改善策や新しい試みなどを考えることができないため、朝7時から始まる午前中の作業が終わると、11時~14時まではしっかりと休憩を取るようにし、日が落ちる17時頃には帰宅するように心がけています。

そうして自分でスケジュールや作業方法を考えることができ、それが結果につながるところが、農業のおもしろさです。圃場がある地域は、多くのいちご農家が集まっている地域。研修所の卒業生も近くで就農しているため、先輩方の話を聞きながら、自分に合った方法を考えています。現在は就農4年目を迎えていますが、大きな失敗はなく、小さな失敗を改善の材料にしながら、毎年収入を伸ばしています。

効率化やブランディングで、農業を“なりたい職業”に

 農業は、自分のやり方次第で時間短縮や効率化を実現することができ、空いた時間で違うことにもチャレンジすることができる、大きな可能性を秘めた仕事だと思います。今後も自分なりの方法で効率化・省力化を追求し、次世代の子どもたちにも「農家になりたい」と思ってもらえる職業になればうれしいです。

 また、農作物は市場の需要と供給に左右され、生産者が価格を決められないことが多い商品です。より付加価値をつけて、より豊かな収入を得るためにも、仲間と連携してブランド力を高めたり、出荷できないものを持ち寄って加工品をつくったりと、工夫を凝らすことも必要だと感じています。私のこうした考え方も、これまで製造業で培ったもの。農業は、さまざまな経験がいかせる職業なので、興味のある方はぜひチャレンジしてほしいです。

OFF TIME

昼間の休憩時間と休日をしっかり確保!

就農1年目は、勝手が分からずなかなか休日を取れませんでしたが、今は自分の予定に合わせて自由に休みを設定することができています。毎日の作業も、昼間は3時間の休憩を設けて体をリフレッシュしています。夜も早く帰宅できるため、家族との時間が取れるのも魅力です。