兄妹それぞれの視点で、花の栽培・販売に尽力

中津川市 トマト 花き 親元就農

鈴木博貴さん・安保有美さん

出身:岐阜県中津川市
就農年月:2014年4月/2020年4月
栽培している農作物:ラン、トマト
現在の圃場規模:ラン12アール、トマト10アール

インタビュー

Interview

栽培と装飾という異なる道から花に携わり、親元就農へ

博貴さん/私は、中津川市内にある岐阜県中山間農業研究所で研究員補助として働いていた際に、ランを専門に栽培していた父が他界し、後を継いで就農。子どもの頃から父を手伝っていたことや、岐阜県中山間農業研究所で花や米の栽培を学んでいたことのおかげで、スムーズに就農することができました。私が就農した後、妹も手伝ってくれるようになり、母と8人のパートさんとともに、ランの栽培や直売店の運営を行っています。現在は、中南米原産で寒さに強い「リカステ」や、和の趣や美しさを楽しめる「和蘭」を中心に、15~20品種のランを2万株ほど育てています。

有美さん/私は、岐阜県立国際園芸アカデミーでフラワーデザインを学んだ後、10年以上生花店に勤めていました。その中で、切り花のアレンジをメインで行う生花店では、なかなか寄せ植えのアレンジにまで手が回らず、生産者側でアレンジされた寄せ植えを仕入れたいというニーズが高いことを実感。ラン専門農家だからこそ、そうしたひと手間を加えた付加価値の高い商品を出荷するべきと考え、兄を手伝うことを決めました。現在は、販売店での寄せ植え商品づくりを担当しています。

長い年月と手間暇をかけて咲かせる、花栽培の難しさ

ランは苗を植えてから花を咲かせるまでに、最低でも3年、長いものだと6年を要する点に難しさがあります。育てたい品種の苗を買っても、出荷できるようになった時に市場で求められるものであるかは分からないため、時代の流れや相場を先読みして、品種を選ばなければいけません。また、どんな色の花が咲くかは、開花するまで分からないところも難しさであり、一方では栽培の楽しみでもあります。

花の出来は、それぞれの品種に適した環境をどれだけ整えられるかで決まります。そのため、温度や湿度、肥料や水の量など、日々の管理をていねいに行うことを心がけ、できる限り原産国に似た環境づくりに取り組んでいます。

さらに、花は季節を彩るものなので、開花させる時期も非常に重要になります。特にランの需要が最も高くなるのは、年末のお歳暮シーズン。開花時期は、日頃の管理によって前後1ケ月ほど調節ができるため、この時期に花が咲くように毎日気を配っています。

地域の農業を守り継ぐために、常に新たな挑戦を

博貴さん/私たちが住む中津川市周辺は、シクラメン栽培発祥の地でもあり、昔から花の生産者が多い地域でした。しかし、最近はどんどん生産者が減少しています。そんな中、私が農業を始めて強く感じたのは、「農業は地域の土地を守る役割がある」ということ。栽培に欠かせない水を引くために水路を整備したり、農地を管理することで土地が荒れるのを防いだりと、地域の農家が農業を継続していくことは、地域の自然保全につながります。

この地域の自然や雇用を守るために、私は就農後、ラン栽培の出荷時期ではない夏場に栽培できる農作物を検討。不織布ポットに1株ずつ定植する3Sシステムを採用し、夏秋トマトの栽培を始めました。また、地域の高校生のインターンや中学生の職場見学を積極的に受け入れて、農業の大切さを伝えることにも注力しています。

有美さん/これまで花のデザインを学んできた中で、花も生産したままではなく、デザインを加えたりブランディングをしたりすることで、販売数を増やすことができるということを実感しました。近年は、寄せ植えされた商品の人気が高まっており、私も寄せ植え商品の種類や数を増やしていこうと、日々頑張っています。また、販売店を訪れるお客様から、店で寄せ植えアレンジを教えてほしいという要望があり、定期的に寄せ植え教室を開催して、寄せ植えの魅力を感じてもらう機会をつくっています。

OFF TIME

花とのふれ合いを広める活動をライフワークに

普段はなかなか休日をとることができませんが、最近はできるだけ農作業をパートさんに任せられる体制をつくっています。そうして空いた時間を利用し、保育園の子どもたちに小さな花瓶を配って、花を飾ることを習慣にしてもらう取り組みをライフワークとしてスタートする予定。新たな目線で農業を守る活動を広めていきたいです。