親元就農し、親子3人でトマト栽培に従事
兼山 裕基さん
出身:岐阜県郡上市
就農年月:2018年4月
栽培している農作物:トマト(桃太郎ワンダー、麗夏、麗月)
現在の圃場規模:40アール
インタビュー
Interview
それぞれの特徴を生かして、3種のトマトを栽培
私の実家は、父が約25年前から始めたトマト農家でした。私は次男のため、最初は農家を継ぐつもりはありませんでしたが、自分は体を動かす仕事が向いていると感じ、農業を学ぶ高校へ進学して園芸を専攻。その後、岐阜県農業大学校に進み、卒業して実家で就農しました。
夏秋トマトの産地の中でも、私が住む郡上市和良地区は高山市などに比べて気温が高く、早めに出荷ができるというメリットがあります。そのため現在は、早く色づき早期に収穫ができる桃太郎ワンダーと、3年前から試作を始めた麗月、味がいい麗夏を組み合わせ、3種類のトマトを栽培しています。3種類のトマトは、毎年の出来を見極めながら、どのくらいの割合で栽培するかを決めています。
工夫を凝らして、変化する気候条件に対応
農業大学校では、多くの生徒が限られた面積の圃場で栽培を体験していましたが、実際に就農してみると、かなりの広さの圃場を父と母、そして私の3人で世話しなければならず、暑さや体力仕事に慣れるまでの1~2年は、とても体に負担を感じていました。仕事に慣れた今は、限られた時間の中でいかに効率よく作業をするか日々考え、改善を重ねています。
また近年は、梅雨が明けると急激に気温が上がるようになり、トマトが萎れたり、実に直射日光が当たって焼けてしまったりすることから、暑さへの配慮が必要になりました。そこで、ハウスの中にファンを設置し、風を送って気温を下げるシステムを導入。加えて、夜温が高いとトマトが休まらないため、屋根の上にパイプを通し、水をかけてハウス自体を冷やすよう工夫を凝らしました。これでトマトへの被害を防ぐだけでなく、作業もしやすくなるのではと期待しています。さらに今後は、最近増えている長雨や豪雨に備えて、水路につながる側溝をつくり、排水対策を施したいと考えています。
農業において、一番の悩みは毎年異なる天候や異常気象への対応です。その点はいつも苦労がありますが、手間をかけた分、収穫量が増えるなど結果が目に見えて分かると、モチベーションがグッと高まります。この点は、やはり農業の醍醐味だと感じています。
両親から受け継いだ畑を守り、新規就農者を育成したい
親元で新規就農をする場合、就農して5年以内には経営の移譲を行わなければならず、私も2021年に経営者になりました。しかし、今はまだ父や母に作業を頼っている部分が多く、私よりも長時間作業をしている2人の姿を見て、「なぜあんなに働けるのか」とあらためて両親に尊敬の念を抱いています。少しでも早く効率的に作業ができる環境を整備し、両親に頼らず自分の力で経営をしていくことが目標です。
また、父は若手の就農者を育成する「岐阜県指導農業士」に認定され、これまでも郡上市で就農したい人を受け入れてきました。今もうちで研修を受けた人が移住・就農し、トマト農家として活躍しています。近年、郡上市でも高齢化によって農家を辞める人が増えている中、私も農業を志す人を受け入れて、地域の農業に貢献していければと思っています。
冬の間は除雪作業に従事
トマトを収穫する11月中旬までは、休みを取ることができず、日の出から昼までと、暑さが和らぐ夕方から暗くなるまでの間、作業を続けます。シーズンが終わって片付けが完了するのは12月中旬。そこから2月の種蒔きまでは、休みを取りながら建設会社で除雪作業を手伝っています。