農業とその恩師に出会い、人生が大きく変化

高山市 トマト 独立自営就農

下本 大吾さん

出身:岐阜県高山市
就農年月:2019年4月
栽培している農作物:トマト(麗月)
現在の圃場規模:43アール

インタビュー

Interview

トマトの生命力に心を動かされ、就農を決意

 私は結婚後、さまざまな職業を経験した中で、トマト農家で働く機会がありました。初めてトマト栽培に携わった時は、小さかった苗が毎日見る度に大きく成長し、花や実をつける姿を見て、ただただ感動し、自分でも育ててみたいと感じました。当初は「人が足りない」という声を受けて始めましたが、働くうちに「どうせやるなら自分で始めたい」と思うようになり、国の研修制度を活用して高山市丹生川町にある農家で研修を受けることにしました。

 研修先では、トマト栽培の基本を教えてもらうだけでなく、農業は1人でやるわけではなく仲間が必要だということや、その仲間と付き合うために必要な礼儀など、農家としての心得も教えてもらいました。人生の師でもあり、第二の父に出会えたことで、人としても成長することができたと感じています。研修先の農家さんには、独立後の現在も分からないことや困ったことがあると、すぐに連絡をとってアドバイスをもらっています。

トマトにも地域にも寄り添う農業を

 研修後に就農してからのトマト栽培は、それまで研修先で行っていた栽培とはまったく同じようにはいかず、うまくいかない時の対処法も分からない状態が続きました。それでも「1年ずつ経験値を増やしていこう」と試行錯誤を重ね、3年目になってようやく解決法や適した対応が分かるようになりました。

 最も大切にしていることは、毎日トマト1本1本をしっかりと見ること。トマトは1本として同じものはありません。育てている8000本以上のトマトを1本ずつ見分けられるくらい丁寧に見ていけば、異変に気づき、すぐに対処することができます。手間暇はかかりますが、やればやるだけ結果がついてくる仕事なので、夢に出てくるくらい毎日トマトのことを考えています。

 もう1つ心がけているのは、地域の人との関わりを持つことです。同じ高山市内でも、異なる地域に圃場を借りたため、周囲の住民に挨拶をしたり、圃場やその周りを清潔に保ったりしながら、受け入れてもらえるように努めています。初物ができた時にはご近所の方へ配りに行き、地域のお祭りにも収穫した作物を寄付して参加するなど、地域の輪に入ることで、困った時にも助けてくれる人や仲間もできています。

規模を広げ、農業を志す人の雇用の受け皿に

新規就農者は、5年間の補助金をもらうことができますが、私は補助金が終わる5年後までに規模を拡大しておきたいと考え、補助金を圃場の拡大や道具の充実、人材の確保などへの投資に充てています。そのため、就農時は19アールの圃場からスタートしましたが、3年目に倍の面積まで拡大でき、雇用も4人に増やすことができました。

今の目標は、10年後に100アールまで圃場を広げること。また法人化も視野に入れて、農業に興味のある人を雇用し、1年を通して働いてもらえる場所にしていきたいと考えています。若い人はもちろんのこと、高齢の方も定年後の仕事として興味を持ってもらえたらと思っています。さらに、収穫したトマトを使った加工品も作ってみたいなど、今後に向けて夢がどんどん膨らむ毎日です。

OFF TIME

手伝ってくれる家族と冬場に旅行も

収穫のピーク時は、早朝から夜まで作業に追われて休みもないため、妻や息子と娘も休日には作業を手伝ってくれています。その分、休みが取れる2~3月には、旅行など家族サービスをしています。そのほか、冬場はスキー場でゲレンデ整備の仕事をして、4月から農作業を再開します。