手間をかけた分だけ結果が出るいちご栽培に夢中に
伊藤智哉さん・杏菜さん
出身:岐阜県揖斐郡池田町
就農年月:2019年8月
栽培している農作物:いちご(美濃娘)
現在の圃場規模:20アール
インタビュー
Interview
地元のいちご農家で1年間修業して就農
私は以前勤めていた会社からの転職を考えていた際に、10年以上前に新規就農でいちご栽培を始めた人に出会い、そこで手伝いをさせてもらうことになりました。その中で、「自分もいちご栽培をやってみたい」と思うようになり、1年間、栽培方法を学ばせてもらうことにしました。
その方は、この地域ではトップクラスの収量を誇るいちご農家。そこで栽培方法から収穫、換気などハウスの環境管理など、すべての作業を経験させてもらい、その1年の間は、農業が本当に楽しいと感じました。最も強く感じたのは、農業は手間をかけた分、結果が返ってくるということ。特にいちごは、やり方次第で収量の差が大きく出る作物です。時間を見つけて整理作業に手間暇をかければ、収量が上がっていく点におもしろさと可能性を感じました。
私が栽培方法を学んでいる間、妻も時々パック詰めの方法などを教えてもらい、就農に備えました。その後、祖父が野菜や米などを育てていた土地を利用し、就農することができました。
周囲に相談しながら、最適な栽培方法を探究
先輩農家さんのもとで多くのことを学んだ私ですが、いちごの栽培はとても難しく、例えば乾燥しやすい場所ではダニが発生しやすく、湿った土地ではカビが生えて病気になりやすいなど、特に圃場のある土地の環境に対応して、栽培方法を考えなければいけません。私が就農した場所は、非常に乾燥する土地だったため、初年度からダニにとても悩まされました。そこで、修業をさせてもらった先輩農家さんに相談したり、周りでいちごを栽培する地域の農家さんにハウスを見せてもらったりしながら、土地の状況や対処方法を把握。その甲斐あって、1作目は目標の収量をクリアすることができました。
翌年からは、病害虫が増えるようになり、他の農家さんはもちろん、普及員にも農薬についての知識を教えてもらいながら、適した農薬の種類や撒くタイミングなどを考え、対策をしています。また、昔からの土耕よりは体の負担は少ないですが、やはり体力と根気が必要だということを実感しています。特に芽かきなどの整理作業は、1列を終わらせるのに1日かかってしまうこともあり、天候にも左右されて、なかなか思うように作業スケジュールを立てられないこともあります。今後も毎年、安定した収量がとれるように、こうした課題を1つずつクリアしていきたいです。
夫婦共に仕事をすることで、よりいい関係を構築
私は就農した当初から、食べ応えのあるいちごをつくりたいと思い、摘花に手間暇をかけて実の数を絞り、大きな実をつくることに注力してきました。美濃娘は芽が多く出る品種のため、摘花には非常に手間がかかりますが、その結果、3Lサイズの大きな実をたくさんとることができています。
大変なことも多いいちご栽培ですが、昨年から少しずつ直売所にも置かせてもらうようになり、消費者の声を聞いたり、実際に自分たちがつくったいちごを届けられる喜びを感じたりすることが、励みになっています。今後もよりおいしそうに見えるよう、パックの詰め方を工夫するなど、多くの人に手に取ってもらえるようにしていきたいです。
現在、日々の栽培や収穫の作業は主に私が行っていますが、葉や芽の整理やパック詰めは、妻と母が担当しています。夫婦一緒に働くようになったことで、お互いの大変さを理解するようになり、育児や仕事を分担するようになるなど、以前よりもいい関係を築けていると感じています。
「美濃娘」の魅力は酸味と食べ応え
「美濃娘」は、「濃姫」に続いて2番目に岐阜で育成されたオリジナル品種です。色つやのいい果肉は硬めなので、しっかりとした歯応えの食感が楽しめるほか、崩れにくいためケーキなどに使用するのにも適しています。また、甘味だけでなく爽やかな酸味が感じられ、ジューシーなのも特徴です。