常により良い栽培や経営を追求する楽しさに魅了

岐阜市 いちご 独立自営就農

鷲見 健登さん

出身:愛知県みよし市
就農年月:2018年6月
栽培している農作物:いちご(美濃娘)
現在の圃場規模:18.84アール

インタビュー

Interview

いちご栽培の難しさを実感し、いちごの専業農家に

 私は、父の実家が柿農家を営んでいたため、「将来は柿農家を継ぎたい」と思い、植物系細胞工学が学べる長浜バイオ大学へ進学しました。大学卒業後、すぐに柿農家を始めようと思ったのですが、柿農家は最低でも2.7ヘクタールの畑と年間7人の雇用がないと経営が成り立たないと知り、難しさを実感。そこで、8~10月に収穫できるいちじくと、10~12月の柿、そしてその農閑期を埋める作物としていちごを入れた三毛作をしようと決め、14ケ月の間、JA全農岐阜いちご新規就農者研究所での研修を受けました。

 しかし、実際に勉強してみると、いちごは他の農作物と比べても栽培が非常に難しく、とても柿やいちじくと両立することはできないと感じました。そこで、柿といちじくは父に任せ、私はいちご栽培に専念することを決意。そこで研修を修了後、父の実家の近くでいちご農家として就農し、現在は主に伯母と2人で作業を行っています。

自分の思うようにチャレンジできるのが魅力

 いちごは非常にデリケートな作物のため、毎日様子を観察し、肥料や窒素、水分などの適量を見極めることが非常に重要です。そこで、研修所の先生や仲間、地域の篤農家さんに話を聞いたり、いちご栽培に関わりのある論文を読んだりしながら、常に勉強を重ねています。

 昨年は、研修所で学んでいた頃に疫病で株がすべて枯れてしまった経験を活かし、根を腐らせないように、土壌へ空気を入れる装置を導入しました。これは、父が先に導入していたものを、いちごにも採用できないかと勧めてくれたもので、自分でも効果があるか精査した後に導入したところ、岐阜県内でもトップクラスの反収(1反あたりの収穫高)を達成することができました。

 このように、リサーチした方法を自分の思う通りに取り入れ、栽培方法や経営を改善していけるのが、農業の魅力の1つです。自分が見つけ出した方法が成功し、他よりも高い糖度や良い見栄えのいちごができるなどの成果を実感できた時は、大きな喜びを感じられます。たとえ失敗しても、その結果を次の糧にして、さらにステップアップすることができると感じています。今後も、1つのやり方にこだわらず、さまざまな栽培や経営の方法にチャレンジしていきたいです。

規模を拡大し、魅力ある農業を発信

 また、いちごは栽培の難しさや日持ちの悪さから、後継者がなく離職していく農家も増えている一方で、市場の需要は高まっており、単価も上昇傾向にあります。私も法人化も視野に入れ、まずは5年以内にもう1連棟ハウスを増やすことを目標にして、規模拡大を目指しています。収量を増やすことで、将来は地産地消に貢献できたらと思います。

 しかし、収量が多くなるのはいいことですが、収量が多くなるほど作業量も増えて人手も必要となり、そのバランスをとることが課題の1つにもなっています。そこで現在は、人手が必要となる収穫期には、近隣にある大学の学生を雇用。人づてで働きたいという学生も増え、毎年10人前後を雇えるようになりました。一般的に、農業は大変なイメージがあると思いますが、そうした点を改善しながら魅力ある経営をすることで、ここで働いた人の中で将来農業を始める人が出てきたらうれしいなと思っています。

コラム

安定した収穫時期で人気が高まる「美濃娘」

 植物が成長して、花になる芽をつくるようになることを「花芽分化」といいます。いちごは、気温が低くなること、日が短くなること、いちごの栄養素である窒素が減少することを条件に、花芽分化が始まりますが、近年は秋頃の気温が高いことから花芽分化が遅くなり、収穫時期の遅れが問題となっていました。その点、「美濃娘」は花芽分化に日の長さを重視する傾向があるため、気温に左右されず、最もニーズが高まるクリスマスシーズンに安定した収穫ができるとして、近年は栽培する農家が増えています。また美濃娘は、糖度と酸味のバランスがよい上、果実が硬く出荷後も長持ちするのが特徴です。