一度農業を離れ、果樹栽培への思いを再確認
坪井 和香奈さん
出身:岐阜県中津川市
就農年月:2020年1月
栽培している農作物:りんご(シナノスイート、サンふじ)、桃(白鳳、あまづくし、飛騨おとめ)
現在の圃場規模:50アール
インタビュー
Interview
農業大学校で果樹栽培の楽しさを知り、久々野へ
高校時代は商業高校に通っていましたが、幼い頃から花の生産をしていた母を手伝っていた経験もあり、将来は農業をしたいと思って農業大学校へ進学しました。農業大学校では、さまざまな農作物を体験して専攻を決める際、果樹栽培に興味を持ち、2年生の時に1ケ月間の研修で、久々野の南果樹園を訪れました。南果樹園は跡取りがなく、「果樹栽培をやりたいという人にやってもらえるなら、跡を託したい」と聞き、就職することにしました。
南果樹園ではとても充実した日々を送っていましたが、勉強を重ねるうちに、ここで行われている方法は違う、新たな栽培方法にも挑戦したいと思うようになりました。独立することも考えましたが、その時はまだ24歳。金銭的な不安もあって踏み切ることができず、一度果樹栽培を離れてじっくりと今後を考えようと決意しました。2年間、農業以外の仕事を経験しましたが、やはり果樹栽培がしたいという自分の強い思いを再認識し、南果樹園に相談。果樹園の一角に50アールの土地を借りて、就農することになりました。
果樹は、木を植えて実がつき始めるまでに3年、収穫量を増やすまでに5年ほどかかるため、一から新規就農するのが難しい農作物。この地域でも、私が初めての新規就農者です。私は20歳で南果樹園に来た際、将来を見越して今の畑を整地し、翌年から苗をつくって木を栽培し始めました。就農した時には、その木が7年目を迎えており、自分がつくった畑と木でスタートすることができました。
1本の木と長く関わる楽しさと難しさ
私は現在、25アールずつの畑でりんごと桃を栽培しています。気温が低い飛騨では、桃は他の産地より1ケ月遅い8月から、りんごは9月中旬(私が栽培する品種は10月中旬)から収穫がスタート。作業は朝早くから行うため、慣れるまでは大変でしたが、仕事自体は負担を感じることはなく、楽しさの方が勝っています。
山の斜面に畑が広がる果樹は、ハウス栽培とは違って天候の影響を直接受けるほか、鳥獣害も多く自然環境との共存がとても重要な作物です。桃であれば15~20年と、1本の木に関わる時間も長く、剪定など日々の作業も、大きな木では半日かかることもあります。また、雪深い飛騨地域では、雪の中でも作業が続く大変さや凍害の心配もあります。難しさは尽きませんが、困った時には南果樹園に相談できるほか、この地域は畑を継いで活躍している若手農家さんも多いため、情報交流をしながら1つずつ課題を解決しています。
また、久々野地区は私のように突然移住してきた人でも、あたたかく受け入れてくれる環境です。のどかで住みやすい反面、田舎暮らしなので買い物に不便を感じることもありましたが、最近ではコンビニエンスストアやドラッグストアなどもでき、不自由なく生活できています。
久々野の果物で人を笑顔にしたい
私は、自分が挑戦したい栽培方法を求めて新規就農したこともあり、現在は南果樹園では栽培していなかった「シナノスイート」や、栽培が難しくこの地域ではつくっているのが珍しい「あまづくし」「飛騨おとめ」など、2種のりんごと3種の桃を育てています。今後は、吟味しながら他の品種も増やし、来年にはりんご畑の土地も広げていきたいと考えています。
常に心がけている目標は、自分がつくった果物で、人を笑顔にすること。今は1人で栽培できる量には限りがありますが、その分、1つ1つ手間暇を惜しまずていねいに作業を行い、おいしい果物を届けたいです。将来、南果樹園を任せていただけるように日々研鑽を積んで、久々野の果物をもっと多くの人に知ってもらいたいと思っています。
高山で誕生した桃の新品種「飛騨おとめ」
「飛騨おとめ」は、飛騨では多く栽培されている「白鳳」と「昭和白桃」という品種かけ合わせ、5年前に高山でつくられた新しい品種で、美しく着色した大玉で甘味の強い実をつけます。白鳳と昭和白桃の中間時期に収穫ができ、8月中旬のお中元シーズンに届けられるのも特徴です。飛騨地域でしか栽培されていない希少品種なので、見つけたらぜひ味わってみてください。