杉江 大輔さん

地域に根差した、世界一の米農家を目指したい

DATA

出身:岐阜県羽島郡岐南町
経歴:岐阜県農業大学校卒
就農年月:2016年10月
栽培している農作物:米(ハツシモ、あさひの夢、みつひかり)、小麦(タマイズミ)
現在の圃場規模:米 22ヘクタール、小麦 20ヘクタール

7年越しの夢を叶え、水稲を栽培する農業法人に就職

 私は普通科高校に通っていましたが、実家で祖父母が農業をしていたこともあり、「将来は農業をしたい」と岐阜県農業大学校へ進みました。大学校では、2年生の時に水稲農家での研修を受け、水稲のおもしろさを実感。その後も約1年間、水稲農家でアルバイトをしながら、就農を目指して勉強を続けました。

 就農への道を探す際、自身で水田を持つことも考えましたが、生計を立てるための規模を確保していくのは困難だと感じ、給与や社会保障が整い、安定して働ける農業法人に就職しようと決意しました。しかし、当時は就職先が見つからず、大学校を卒業後は農機具の販売や修理を行うメーカーに就職。7年間営業をしていましたが、やはり水稲農家への夢が諦め切れず、現在の職場である(有)合渡水田夢クラブで働き手を探していると聞いた際、その翌日に会社を辞めて、チャンスを掴みました。

 就農後は、年間を通じて現場の農作業をしながら、パート従業員の出勤管理や仕事分担を行っています。作業スケジュールや品種選定など、栽培計画のすべてを任せてもらえるため、とてもやりがいを感じています。現在は、岐阜県の米で地域の気候にも合う“ハツシモ”を中心に、高い収量と作業分散が見込める加工用米の“あさひの夢”と飼料用米の“みつひかり”、小麦を栽培しています。

水稲の難しさを実感しながら、経験をいかして研鑽する日々

 就農する以前も水稲農家で研修を受けた経験があったため、栽培方法や作業の流れは把握していましたが、いざ就農してみると、やはり自然相手である農業の難しさを実感しました。どんなに多くのデータを取り、品種を厳選して、緻密に計画を立てても、思い通りになることはありません。近年は、30年振りといわれる害虫の発生で稲が枯れたり、長雨で収量が落ちたりと、毎年異なる気候条件に試行錯誤しています。

 特に水稲の栽培では、水の管理が肝心要となります。夏場に高温で水が蒸発したり、畦が崩れて水が漏れたりすることがないよう、毎日圃場を見回って細やかな管理を心がけています。岐阜県の水稲農家は仲間意識が強く、先輩方からアドバイスをいただいたり、お互いの作業報告をしたりしながら、より良い栽培方法を探究しています。

 作業は力仕事もありますが、省力化を目指して機械化が進んでおり、中でも水稲栽培では多くの機械を使用します。私が水稲を選んだのも、農業機械に乗るのが好きだったこともあるため、たくさんの機械を扱えるのも楽しみの1つです。特に私は、農機具メーカーに勤めた経験があるため、導入する機械の選定なども任されています。水稲農家にとって、機械が扱える人は即戦力なので、農機具メーカーで機械の扱い方や修理などを学べたことは、大きな価値があったと感じています。

地元にある水田を有効活用し、地域の稲作の担い手に

収穫した米はほとんどがJAへ出荷されますが、「地元でとれた米を食べたい」とおっしゃる地域の方や、自分の水田を預けてくださっている地主さんには、直接販売をしています。販売や配達を通じてそうしたお客様と顔を合わせる時は、実際に消費者の声を聞くことができる貴重な機会。時には「味が落ちた」など厳しい意見もありますが、真摯に受け止めて次にいかすようにしています。

また大規模な農業法人は、地域の稲作を守る役割も担っていると考え、担い手のいない水田の集積化を進めています。この地域には、約130ヘクタールの水田がありますが、高齢化が進み、機械の故障などを機に農業をやめてしまう方も増えています。そうした水田を私たちに預けてもらうことで、地域の土地を有効活用し、私たちも効率的な作業や規模拡大を実現することができます。

そのためにも、地域の個人農家さんには「何か困ったことがあったら連絡してください」と声をかけて、積極的に交流を持つようにしています。今後も地域の農家さんから信頼を得て、地域に根差した農業に取り組み、品質も規模も日本一・世界一の米農家を目指したいです!

コラム  農業法人とは?

農業法人は、法人の形態で農業を営む法人の総称です。一般企業のように株式会社などの形態をとる会社法人と、組合員が農業生産を協業で行う農事組合法人の2種類があります。農業経営を法人化すると、企業としてイメージや信頼度が上がるほか、税制面でも優遇があるため、規模拡大や多角化がしやすくなります。また、新規就農者や地域雇用の受け皿にもなり、働く側も労働環境や待遇が整った中で就農することができます。